2013年・第20回日本プロ音楽録音賞
◎ 部門A「2ch パッケージメディア」クラシック
最優秀賞
- 「火の鳥」 (COCQ-85011)より「バレエ組曲《火の鳥》より
カスチェイ王の魔の踊り」
指揮:飯森 範親 東京佼成ウインドオーケストラ
日本コロムビア(株)より発売 CD
- ・マスタリング・エンジニア:毛利 篤 – 日本コロムビア(株)
・ミキシング・エンジニア:塩澤 利安 – 日本コロムビア(株))
マスタリング・エンジニア 毛利 篤さん 日本コロンビア(株)からの応募作品です。
エンジニア 塩澤 利安さん 日本コロンビア(株)はプロ録音賞の常連エンジニアであり、ジャズ~クラシックまで幅広く録音制作をされております。
東京オペラシティー タケミツメモリアルにてライブ録音作品です。迫力あるティンパニーの響き、力強いブラスサウンド、繊細な木管の響きなど、素直な帯域バランスの中に立ち上がりの良いクリアなサウンドとなっております。素晴らしい録音技術により、音(音楽)の強弱表現がより音楽感動を伝える音創りになっています。マスタリング対応もフォルテシモでもつぶれる感じは少なく、自然で壮大なオーケストラサウンドに上手く仕上げていると思いました。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
優秀賞
- スクリャービン:練習曲全集/ボリス・べクテレフ」 (CMCD-28281)より
「練習曲 嬰ハ短調 作品2-1」 ボリス・べクテレフ
(株)カメラータ・トウキョウより発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:髙島 靖久 -(株)カメラータ・トウキョウ
・エディティング・エンジニア:宮田 基樹 -(株)カメラータ・トウキョウ
代表取締役 高島さんと井阪さんにて大変多くの作品を制作されている名コンビによる作品です。
録音はイタリア教会(聖クローチェ)、演奏に使用されたピアノはファツィオーリというイタリア製ピアノです。このピアノの音色的特徴は倍音が純粋に響き、楽器が共鳴などで邪魔をする雑音を見事にシャットアウトしている銘器との事。
録音はワンポイント録音であり、直接音と間接音の絶妙なバランスにマイクポイントを決め、余裕のある高域の響き、安定した低域の解像力など、音楽の深さが伝わるサウンドです。楽曲への理解、時代背景、演奏者の思い、ホール音響空間など、一つ一つの深い造詣から創られた素晴らしいサウンドであると感じました。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
◎ 部門B「2ch パッケージメディア」ジャズ・フュージョン
最優秀賞
- 「ケイコ・リー・シングス・スーパー・スタンダーズ 2」(SICP3435)より「My Romance(featuring村上てつやfromゴスペラーズ)」
ケイコ・リー
(株)ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルより発売 CD
- ・ミキシング&マスタリング・エンジニア:鈴木 浩二
(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
・レコーディング・エンジニア:米山 雄大
(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
王道のフュージョンサウンドと感じました。録音、ミックス、マスタリングと全て対応される鈴木さんが担当された作品は、どの作品も安定感のあるインパクトの強いサウンドですが、素直で無理が感じない音創りであり、音楽に引き込まれる音創りをされる日本を代表するエンジニアです。今回の作品もドラムの渡嘉敷さんとベースの岡沢さんの名コンビによるグルーヴ感を、生々しくリアルな音質で表現されております。
音創りの核となる安定したパワー感ある低音域サウンドが、ケイコ・リーさんと村上てつやさんの歌を大変気持ちの良いサウンドで支えている事により、歌表情の繊細さも表現された、まさに名演奏・名録音の作品と感じました。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
優秀賞
- 「TOMA Ballads 3」(TOMA-0007)より「The Summer Knows」 苫米地 義久
TOMA MUSICより発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:高田 英男 – フリーランス
・マスタリング・エンジニア:袴田 剛史 – FLAIR MASTERING WORKS
・アシスタント・エンジニア:粕谷 尚平 – ビクターエンタテインメント(株)ビクタースタジオ
プロ録音の運営の関係者が自らの担当作品を応募する事は大変勇気がいる事でしたが、苫米地さんのサックス演奏の素晴らしさを少しでも皆様に知って頂ければとの思いにより、応募させて頂きました。
この作品はサックスプレーヤー苫米地さんとアレンジ・ピアノ演奏の石塚まみさんとの基本一発録音による制作であり、自然で力が入らない“ほっとするサウンド”を目指しました。それぞれのアーティストは自身の個性である音色感を持っていますが、特に苫米地さんの優しく深みのあるサックスの響きが心に届きましたら大変有難いです。又、96kHz/24bitのマスター音源を匠の技でCDマスタリングして頂きました袴田さんに感謝申し上げます。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
◎ 部門C 「2ch パッケージメディア」ポップス、歌謡曲
最優秀賞
- 「edition 10」(VICL-63957)より「Sandstorm」 paris match
ビクターエンタテインメント(株)より発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:谷田 茂 – ビクターエンタテインメント(株)ビクタースタジオ
・マスタリング・エンジニア:川﨑 洋 – FLAIR MASTERING WORKS
谷田 茂さんと川﨑 洋さんのお二人は、2011年のプロ録で、やはりparis matchで受賞しており、今回は、最優秀賞の獲得です。生を知り尽くしたプロデューサー、杉山さんとのコンビも抜群で濁りと歪の無いクリアな音は、高音質への拘りを、制作の隅々まで、生かした仕上がりでした。
(日本ミキサー協会 理事長 梅津 達男)
優秀賞
- 「ソランジュ」(COZA-772~3)より「ソランジュ」 上間 綾乃
日本コロムビア(株)より発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:三浦 瑞生 -(株)ミキサーズラボ
・マスタリング・エンジニア:Stephen Marcussen – Marcussen Mastering
ミキシング・エンジニアの三浦 瑞生さんは、昨年も受賞されており、今の時代の音を良く知っている方です。楽曲の持つ「やさしさ」を大切に、無理なリヴァーブ・響きを使わず自然な音でドラム・ストリングスを纏め、やわらかい三線とAGtでVoを支えていました。
(日本ミキサー協会 理事長 梅津 達男)
優秀賞
- 「愛詞(あいことば)」(AICL-2536)より「愛詞(あいことば)」 中島 美嘉
(株)ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコードより発売 CD
- ・マスタリング・エンジニア:酒井 秀和 -(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
・ミキシング・エンジニア:甲斐 俊郎 – フリーランス
・レコーディング・エンジニア:藤田 敦 – フリーランス
・アシスタント・エンジニア:公文 英輔 -(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
編曲は大御所 瀬尾 一三 さんで、ダイナミックで王道のストリングスをエンジニアの甲斐 俊郎さんは、マイクに入って来た素直な音をストレートに表現し、Jポップのサウンドに仕上げ、中島さんの唄の上手さを引き出していました。
(日本ミキサー協会 理事長 梅津 達男)
◎ 部門D 「2ch ノンパッケージ」
最優秀賞
- 「GRACIM」より「Puzzle Ring」 渡辺 香津美
ネット配信元: e-onkyo music フォーマット:96/24
発売元:ewe records /(株)イーストワークスエンタティンメント
- ・ミキシング&マスタリング・エンジニア:鈴木 浩二 -(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
・レコーディング・エンジニア:渡辺 香津美
渡辺 香津美さんのプライベートスタジオ録音。パーカッション、シンセベースにて低域の安定したリズムの芯を創り、その上にギターとピアノサウンドが、絶妙なバランスにより融合された音創りになっております。
ハイレゾリューション独特の解像力の良さもあり、ギターサウンドにおける繊細なフレーズも奥行き感を持って表現され、鈴木さん自身のコメントにもありますが、まさに立体的サウンドに纏められた素晴らしいサウンドと感じました。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
優秀賞
- 「黎明」より「銀河の旋律」 深町 純
ネット配信元: e-onkyo music フォーマット:96/24
- ・ミキシング&マスタリング・エンジニア:沢口 真生 – (有)沢口音楽工房
・アシスタント・エンジニア:伊藤 仁 – フリーランス
深町 純さん自身、ピアノ演奏において大変アタックが強いピアニストでありますが、この作品はピアノサウンドのリアル感、素晴らしい透明感など、演奏されているピアノ線一本一本が見える感じの素晴らしい録音と感じました。まさにハイレゾリューションならではの素晴らしい解像力を上手く表現された作品です。
又、沢口さんのコメントにもありますが、PYRAMIX NATIVE+RME(ピラミックス ネイティブ)のコンパクトな録音システムにての録音であり、デジタル時代の新たな音楽制作への提案もされている作品と感じました。
(ビクターエンタテインメント株式会社・サウンド・プロデュサー 高田 英男)
◎ 部門E 「サラウンド・サウンド」
優秀賞
- 「ベートーベン交響曲全曲演奏会2012年日本公演」(NSBS-18600)より
「ベートーベン交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」第4楽章~第5楽章」
マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団
(株)NHKエンタープライズより発売 Blu-ray Disc フォーマット:96/24 5.0ch
- ・ミキシング・エンジニア:深田 晃 -(株)dream window
・マスタリング・エンジニア:石井 亘 -(株)音響ハウス
・共同制作・エンジニア:島嵜 砂生 -(株)NHKメディアテクノロジー
聴いて思う事は、曲は勿論ですが、演奏も録音も素晴らしいのひと言です。木管の生き生きとしたさま、緻密な弦の響き、それらを支える低弦の重厚さ、このようなオーケストラの音のうねりは 風の音、木々のざわめき、楽しそうな人々……楽章に付けられた標題の情景が素直に浮かびます。又、オーケストラの定位も大変良く、美しい響きの木管から左右のバイオリンに音が移りさらにビオラやセロに受け継がれる音の動きのリアリティは、ホールの特等席で聴いているような臨場感のあるサラウンド・サウンドです。
深田さんは今回のミキシングポリシーを「指揮者マリス・ヤンソンスの表現を実現する事」と述べています。その為に、常識的なマイクセッティングだけでなく、ピッコロや2ndバイオリンなどにもマイクを設置し、そして、「ダイナミクスと繊細さ、豊かな響きとクリアな音」という相反するテーマを持ち、注意深くミキシングされたそうです。今回の受賞は、このような深田さんの音楽に対する深い造詣と長年培われました技術力による賜物と思います。
(日本音楽スタジオ協会 専務理事 清水 三義)
◎ ベストパフォーマー賞
- 「But Beautiful」より「Teach Me Tonight」
後藤 輝夫 & 佐津間 純
ネット配信元: e-onkyo music フォーマット:192/24
今回受賞された作品は、サックスとギターだけで、淡々とスタンダードナンバーを演奏する「But Beautiful」というアルバムの中の「Teach Me Tonight」という曲です。ナット・キング・コールが歌っていてお馴染みの曲なんですけれど、今回ハイレゾの配信ということで、192kHz/24bitという極めて広いレンジの中で、サックスとギターと、それから聴き手である自分自身も含めて、ひとつの同じ部屋の中でとても親密な関係で居合わせているという風な、音楽としてすごく上質な世界観を提示しているのではないかと思いました。昨今はヘッドルーム目一杯まで詰め込むというような音楽が巷にあふれている中で、この編成でスタンダードナンバーをやるということ自体がすごくチャレンジイだと思いますし、すごく新鮮だったと思います。
部屋全体がいい感じで鳴っている中で、サックスのバルブの音とか、ギターの弦を擦る音とか、演奏者のイスの軋みまでが聞こえてくるような、とてもリアルでオープンなサウンドにすっかり魅了させられてしまいました。またこのアルバムは、亀吉音楽堂というスタジオで録音されたということですが、レコーディングにあたられたエンジニアの方の力量もかなりすばらしかったのではないかと思います。
(演奏家権利処理合同機構MPN 理事長 椎名 和夫)
◎ 新人賞
- 「ジャズィ・カンヴァセイション」(NCS-868)より
「ジャズィ・カンヴァセイション」
SOIL&”PIMP”SESSIONS Feat.RHYMESTER
ビクターエンタテインメント(株)より発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:渡辺 佳志 – ビクターエンタテインメント(株)ビクタースタジオ
渡辺 佳志さんは35歳とのことで、この新人賞のアンダー35歳のぎりぎりでの入賞になります。
この作品ですが、さて音楽ジャンルは何になるのか考えてみましたが、私なりに、ヒップホップ・JAZZかなと思いますが、JAZZサウンドをベースにラップやスクラッチがうまく融合している、聴いていて非常に楽しい音楽です。
サウンドの方は、JAZZはナチュラルなJAZZサウンドに仕上がっていまして、特に、収録が難しいとされている、ウッドベースの音作りは非常にうまいと感じました。
そのJAZZサウンドにラップとスクラッチが、下手をすると、どれかが浮き立ってしまい、全体が崩れてしまいますが、渡辺さんのミックスは見事に溶け合い、独特な音楽世界を作っています。
(日本音楽スタジオ協会 会長 内沼 映二)
- 「脱走のシーズン」(KSCL-2148)より「脱走のシーズン」
Prague (株)キューンミュージックより発売 CD
- ・ミキシング・エンジニア:野口 素弘 -(株)ソニー・ミュージックコミュニケーションズ
基本的に3ピース、つまりギター、ドラムス、ベースのロックサウンドですが、全体の仕上げとしては、今、流行りのコンプレッションサウンドに仕上がっています。特に、ドラムス、ベースの極太な音作りでパワー感とビート感を醸し出しています。また、ギターサウンドの作りもクリアな収録がされて、特にディレー及びリヴァーブの使い方や、右左のパンニングの手法も非常に見事です。
野口さんはまだ31歳とのことですが、将来楽しみなエンジニアと思います。
(日本音楽スタジオ協会 会長 内沼 映二)