過去のおすすめソフト
2015年10月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
センチメンタル・ジャーニー
ニッキ・パロット
品種:スーパーオーディオCD
発売元:ヴィーナスレコード(株)
発売:2015.10.21
価格:¥4,428(税込)
品番:VHGD-104
聴きどころ
今月はヴィーナスレコードから10月に発売されるスーパーオーディオCDシングルレイヤーアルバムから3作品を取り上げる。1作目は今年4月に録音され9月にCDが発売されたオーストラリア出身のベーシスト&ジャズシンガーのニッキ・パロットがドリス・デイのナンバーを取り上げたアルバム。先ずニッキ・パロットの温かみのある歌声は聞く人の耳を和ませ、その丁寧な歌い方はドリス・デイのストレートな歌い方に通じるものがあると好印象を持った。余談ではあるが、彼女の丁寧な歌い方は歌詞が良く聞き取れ英語の勉強になるかと思う。1曲目はスローテンポの感情のこもった曲、サックスとボーカルの掛け合いがぴったり合っており1曲目から彼女の世界に引き込まれる。スローテンポの曲が多いが3曲目はコールポーターの名曲Just one of those things等、アップテンポの曲では心地よくスイングする。また、ギターをバックに歌う5曲目、ピアノをバックにする9曲目は彼女の魅力をたっぷり楽しめる。タイトル曲の13曲目はボーカルを多重録音し、バックコーラスを自ら歌い、さらに雰囲気を出し、彼女のベースもフィーチャーされている。サポート陣は出過ぎず的確にボーカルをサポートし、特にサックス、クラリネット、フルートを曲ごとに楽曲に合わせ吹き分けるアンドリアン・カニングハムのサポートは素晴らしい。また、ギターのフランク・ヴィニョラも随所で素晴らしいソロを聴かせる。録音はボーカルがセンターに定位し、各楽器がボーカルを包み込むように広がり、全体としては彼女の歌声に合わせたWarm toneに仕上がっている。決してオーディオチェック的なシャープな音ではないがボーカルと楽曲の雰囲気にぴったり合っている。勿論、決してボケた音でなく、粒立ちのはっきりした高品質な音質である。ドリス・デイのヒット曲をカバーしているので当然曲にはずれはなく、最後まで楽しく聞くことが出来る。楽曲、音質共に、仕事の終わった後、リラックスして聞くには最高のアルバムである。
評:JAS
2015年10月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
月光のソナタ
サイラス・チェスナット・トリオ
品種:スーパーオーディオCD
発売元:ヴィーナスレコード(株)
発売:2015.10.21
価格:¥ 4,428(税込)
品番:VHGD-107
聴きどころ
2作目はヴィーナスレコードならではのピアノトリオ作品。演奏はサイラス・チェスナット・トリオでクラシックの楽曲を取り上げたアルバム。録音は2011年で同年に発売されたCDのスーパーオーディオCD 盤である。クラシック楽曲のジャズ化は古くはジャック・リューシェのPlay Bach、オイゲン・キケロのロココジャズ等が有名だが、サイラス・チェスナットはバッハからハチャトリアンと広く馴染みのある名曲を見事にアレンジしている。
1曲目は大バッハの次男エマニュエル・バッハの有名なソルフェージエット。小気味よくスイングし、そのピアノテクニックが冒頭から圧倒する演奏。2曲目は一転してスローテンポで展開する白鳥の湖、後半のベースソロからのオープンスイングへの展開は気持ちいい。3曲目のショパンのプレリュードはドラムのブラシワークが曲の展開を効果的に盛り上げる。4曲目のバッハはベースのサポートが効果的で情緒的で魅力ある楽曲に仕上がっている。5曲目はタイトル曲の月光ソナタ。重厚な展開がベートーベンらしさを効果的に表現している、、、等々全楽曲がそれぞれの特徴を捉え的確にアレンジされ素晴らしいアルバムに仕上がっている。録音はクラシック楽曲にぴったりの透明感のある鮮度の高いピアノ。粒立ち良く、スピード感あるドラム。通奏低音のように楽曲をしっかり支えるベースと、ピアノトリオ録音として最高の音質を実現している。演奏、録音共に最上のアルバムでとても楽しめる。
評:JAS
2015年10月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
ニューヨークの休日
エリック・アレキサンダー・カルテット
品種:スーパーオーディオCD
発売元:ヴィーナスレコード(株)
発売:2015.10.21
価格:¥ 4,428(税込)
品番:VHGD-105
聴きどころ
ピアノトリオの多いヴィースレコードたが、ワンホーンのカルテットのアルバム。ホーンは中堅サックス奏者のエリック・アレキサンダー。2005年録音で2010年に発売されたCDのスーパーオーディオCD 盤である。演奏はまさにジャズと言うメインストリームジャズである。アップテンポの2曲目はジョン・ヒックスのオリジナル曲で、ヒックス自身の気迫あるピアノソロはバックとの一体感が素晴らしく、その後のサックスソロも圧倒的。アップテンポだけでなく、4曲目のスローバラード、5曲目のミディアムテンポでも緊張感のある美しいサックス演奏を展開している。録音は、サックスはスローテンポでの繊細な息づかいから豪快なブローまで、リアルなサックスが録られており、ドラムは空気感あふれ、特にシンバルの粒立ちの良さ、弾け感は素晴らしく、気持ちいい。ベースは重心低く、太く力強く録られており、ヴィーナス録音の真髄を行く、まさにジャズ録音である。少し大きめの音量で聴くとスカッとして最高のジャズを楽しめる。
評:JAS
株式会社音楽之友社 ステレオ編集部(選者)福田 雅光氏 10月の優秀録音盤
株式会社音楽出版社 CDジャーナル誌 (選者)高橋 道彦氏 10月の推薦盤
2015年9月9日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
The Way 宮川 純
Ultimate HQCD仕様
発売元:T5Jazz Records
発売:2015.7.22
価格:¥2,600+税
品番:T5J-1010
聴きどころ
今月は日本の若きJAZZピアニスト・キーボーディスト宮川純のデビュー3作目となるアルバムを取り上げる。宮川純の演奏家としての才能はそのテクニック、音楽性から今回のアルバムにも余すとことなく発揮されているが、今回収録の9曲の内8曲がオリジナル曲で、その作編曲才能を発揮したアルバムでもある。4曲目のPulseは曲名通りパルス音をトラムとピアノで刻み、6曲目のAutomata(ゼンマイ仕掛けの人形)はベースとドラムで人形の動きを表し、その作編曲は楽しめる。黒田卓也(トランペット)がゲスト参加したタイトル曲のThe Wayと9曲目の30秒後に入っているシークレットトラックはインタープレイが素晴らしく「まさにJAZZ」と言う感じで気持ちいい。9曲目のJust a Momentはアップテンポのモダンな演奏。荻原亮のギターソロに始まり、続いて宮川純のピアノソロ、そして圧巻なのがそれらのソロの後ろで畳み掛ける石若駿のドラム。この背後のドラムはそのままソロになり曲を締めくくる。終曲としてとてもスリリングな曲に仕上がっている。録音は重心が低く且つ各楽器の切れがいい好録音。この重心低さは坂崎拓也の、時には軽快に、時には粘るようなアコースティックベース演奏によるところが多い。日本の若手Jazz artistによるオリジナリティーあふれた好アルバムである。
評:JAS
株式会社音楽之友社 ステレオ編集部(選者)神崎 一雄氏 9月の優秀録音盤
株式会社音楽出版社 CDジャーナル誌 (選者)小田 晶房氏 9月の推薦盤
2015年8月20日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
山中千尋 シンコペーション・ハザード
33 1/3回転 30cm LPレコード
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売:2015.8.5
価格:¥5,556+税
品番:UCJU-90012
聴きどころ
<100& Pure LP>仕様によるアナログで180g重量盤。前作NYC録音によるSOMETHING BLUE
(UCJU-90006)がSax、Trumpet、Guitarも加えたゴージャスな布陣でオーソドックスな演奏の
中にも彼女の世界が創られてあったのに対し、今回は全編トリオでの録音作品。
先の同タイトルCD記も参照ください。
A面の頭から小気味良いピアノの刻みやシンバルレガート、ベースがスピーカーから
飛び出してくる。これは気持ちいい。2曲目になると途中でテンポを変化させるアレンジ
になり、音の間(ま)がアナログレコードらしいゆったりした空間を写し出してくれている。
B面で聴けるドラムのブラシ奏法も細やかで奥行ある音に、一瞬ハッとする。30センチ盤で
あるにも拘らず、B面は28分弱と収録時間は長いが、カッティングが功を奏しているのか
全編を通してダイナミックなサウンドで楽しめる一枚。
評:JAS
2015年8月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
インバル(指揮)東京都交響楽団「マーラー:交響曲第 10番」
スーパーオーディオCD ハイブリッド・レイヤー・ディスク
発売元:オクタヴィア・レコード
発売:2015.7.24
価格:¥3,800+税
品番:OVXL-00089
聴きどころ
今月はクラシック1作に加え、日本人プレーヤー参加のジャズ作品3作の計4作を取り上げる。
先ずはクラシックアルバム。7月度で取り上げた交響曲第9番に続き、インバル指揮 東京都交響楽団による新マーラーチクルスの終曲 交響曲第10番を取り上げる。交響曲第10番は「アダージョ」のみが演奏されることが多いが、ここでは1989年に発行されたテリック・クック補筆第2版にインバル自身によるいくつかの処置が施された全曲盤である。ライナーノートによると全曲盤は既に6種類ほどのCDが出ているとの事だが、筆者にとっては初めて聞く全曲盤である。構成はマーラー自身による楽譜がほぼ完成されていた「アダージョ」から始まり、大太鼓の断続的な演奏から始まるフィナーレまでの第5楽章であるが、死を予感させる第9番の次に来る、まさにマーラーが描いた死の世界を表現した交響曲の感がする。録音は第9番と同じくBK4006、2本によるワンポイント録音であり、プロデューサー 江崎氏とマエストロ インバルによる新マーラーチクルスの集大成と言える素晴らしい録音である。江崎氏によるプロデューサーノートでは、1985年のインバル/フランクフルト放送交響楽団によるマーラー交響曲第4番のワンポイントマイク録音にも触れられており興味深い。試聴はスーパーオーディオCD層で行った。
評:JAS