2019年5月8日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト
聴きどころ
サックス奏者鈴木央紹が前作「Standerds++」から5年ぶりとなるニューアルバムを発表。Jazzスタンダード集というオーソドックスなラインナップながらも、サイドにはオルガン宮川純、ドラムに原大力を従えたトリオ編成で録音に挑んでいる。収録はStanderds++同様横浜ランドマークスタジオで、ハコのエアボリュームを生かし、空間の華やかさ上手く表現したハイレゾらしい音創り。特にドラムの皮モノ(太鼓)や金モノ(シンバル)の余韻が美しく、スピーカーシステムからは伸びある音と消え際をきちんと再生してみたいところ。
ご存じのように北米大陸が発祥というJazzはアナログレコーダーが開発されて以来、奏者の想いや情熱、演奏の即興性と言ったかたちの無い「濃い音」の録音に対して様々なアプローチがなされて来た訳で、加えて21世紀に入っていからはその場にある空気感までもが取り込める様になり、よりアーティストが身近になっているとも言えます。Favouritesを聴いて強く感じることは、ハイレゾファイルのメリットである高域の美しさに非のうち何処が無いことも勿論のこと、低域の充実が顕著なこと。オルガンで小気味良く刻むフレーズが重低音域まで自然に伸びており、その中でも音楽の基本となるベースが組み立てられているところが良く判るサウンドに。ドラムのキックとの音色の違いを楽しめるところも、マスタリングの妙で仕上がりが自然で、気をつけたいポイントです。ドラムのマレットやブラシでの奏法も曲中のアクセントになっており、サックスのサウンドに花を添えている。スタンダード集ではあるが、決して聴き流しなどやってはいけないアルバム。
評:JAS