いい音 おすすめソフト

2017年10月13日 日本オーディオ協会が選んだおすすめソフト

聴きどころ

タワーレコード×Sony Classical究極のSACDハイブリッド・コレクション第3弾の2作品を取り上げる。まず、ロベール・カザドシュのピアノ、ジョージ・セル指揮によるモーツァルトピアノ協奏曲集。録音は1959年から1968年で、3トラックまたは4トラックのオリジナルアナログマスターテープから新たにDSD 2トラックステレオにリマスターが行なわれ、SA-CD化されたとのこと。当時の録音状況、また今回のリマスタリングに関しては、ライナー・ノートにリマスタリングを行ったアンドレアス・K・マイヤーによる詳細の解説が「リマスタリング・ノート」として掲載されている。まず、演奏が素晴らしい。ピアノのタッチは明るく滑らかで、オーケストラは弦と管のバランスが素晴らしい。録音はD-レンジの狭さは多少感じるが、歪感、リミット感は全く感じず、自然で透明感のある音色は半世紀前の録音とは思えない。有名な21番の第2楽章は緩やかなテンポで始まる弦がきれいで思わず鳥肌が立つほどである。温かみのある管とのバランスもよく、ピアノは左手の伴奏に右手のメロディーが綺麗に重なり、とても心地よい。2台のピアノのための協奏曲10番ではぴったりと息の合った2台のピアノが左右にバランスよく広がり、スケール感もあり素晴らしい演奏。Disc 1の15番と17番は1968年録音で、4トラックマスターからのリマスターとのことで、情報量も多く、特に低域がしっかりし音像がより下がり、スケール感も豊かになっているのが分かる。時代による録音の特徴が出ているのもオリジナル録音の良さの表れとSA-CD化によるメリットと思う。また、先の「リマスタリング・ノート」に加え、ライナー・ノートがとても充実しており、特に1968年のロベール・カザドシュ来日時にレコード芸術へ掲載されたインタビュー記事はとても興味深い。演奏の素晴らしさに加え、最新技術でのリマスタリング、ライナー・ノートの充実と、リイシューのお手本のようなアルバムで、初めてお聞きになる方は勿論のこと、今までLP、CDで楽しんでいた方にもおすすめ出来るとても高品位な作品である。

評:JAS