2023summer

OTOTEN2023のプランニングに
関わって

OTOTEN事務局 若者代表 岩本双葉

私は小川会長の特命により、末永専務理事の下でOTOTEN2023に若年層の来場者を増やし、ファン層拡大を目指すプロジェクトに参加して、若者代表としてOTOTENの改善案を検討することを担当してきました。このJASジャーナルでは、その全体像についてご紹介したいと思います。

最初に自己紹介をします。現在は長野の放送局で音声担当をしていますが、私が洗足学園音楽大学の4年生の時に、日本オーディオ協会が主催する「学生の制作する音楽録音作品コンテスト」に応募し、優秀録音技術賞を頂きました。表彰式は2019年12月6日の音の日に行われました。

その後、協会でホームページを作り変えることになったので、コンテストに関する写真を提供して欲しいといったご連絡をいただき、その時に「協力できることは全力でやります!」とメールに書いて送ったら、末永専務理事の依頼で、OTOTEN2022の中で、コンテストに関するトークショーをやることになりました。目の前には小川会長が座っておられて、最初は緊張したけれど、その時から小川会長には《双葉ちゃん》と呼ばれることになりました。

半年後の2022年の音の日に、小川会長と末永専務理事に誘っていただき、食事に行きました。小川会長から、「これから毎年、音の日にはコンテストのこれまでの受賞者たちも招いて、アルムナイ(同窓会)にしていきたいから、双葉ちゃんには、その同窓会長をやってもらいたいの!」とお話があり、「はい!やらせていただきます!」と勢いで言ってしまいました。その他にも、「協会には若い人がいないので、若者代表として何でも意見して欲しい」とおっしゃいました。「何を言っても大丈夫だから!」と末永専務理事も優しい口調でおっしゃるものの、笑顔だったけど、今思えば目が笑っていなかったような気がします(笑)。

プロジェクト開始

さて、年が明けて、定期的に末永専務理事とZoomでミーティングを始めました。小川会長も出席されて進捗を報告することもありました。最初にOTOTEN2023に向けて、どんな準備がされているのかをお聞きしました。協会としてはオーディオに触れる若い人たちが少ないと感じていること、ただし、いい音を聴いてみたらファンになってくれる事例や、最近はライブ配信をしている若い人たちが多いので、それに絡んだ機器の展示を増やしていこうとされていることなど、いろいろと考えていらっしゃることは手に取るように分かりました。

逆に一度しか経験していないOTOTENなのに、思う所をどんどんしゃべったら、ひとつひとつ丁寧に頷きながら話を聞いてくださいました。そして、しゃべったことのひとつひとつについて、曖昧にせず、その意味をしっかり聞き返えし、確認され、感覚的にダラダラと口にしているだけではダメで、正しく言語化できるようにならないといけないのだなあ、と勉強させられました。

また、たくさん提案すれば褒めてもらえるかと思ったら、カスタマージャーニーマップというまとめ方を教えていただき、OTOTENを知ってから、来場前、来場、来場中、来場後といったPhaseに沿って改善策を整理していく方法も教えてもらいました。そして、図1のようにまとまり、これで小川会長にプレゼンテーションをさせていただき、「よく頑張りましたね!」とお褒めの言葉をいただきました。


図1. カスタマージャーニーマップにまとめた実行プラン

各Phaseと実行プランについて

では、各Phaseにおける実行プランと実際の実行状況について述べたいと思います。

Phase 1 知る段階

せっかくPRでOTOTENに興味を持ってもらっても、事前登録してもらわなければならないことを思うと、面倒臭いなあと思う人は多いと思います。事前登録は実際にやってみると、まったく大したことではないのですが、登録画面に行くまでが、なんだかうっとうしいものです。協会のホームページに行ったり、事前登録の入り口を探したりしなければならないからです。

一方で、来場者がどういう人たちであるかを把握するのは、主催者側からすると必要なことなので、そのようなデータがあるからこそ、改善の筋道も見えてくることを考えると、なんとかこの面倒臭い気持ちを乗り越えて欲しいのです。

そこで、面倒臭いをいかに減らすかを私は考えました。PRでOTOTENを知ったら、簡単に登録サイトにアクセスできてしまえばいいのです。その方法を考えました。例えば私のFacebookの場合、PRするときは必ず登録サイトのURLを貼るようにしました。

図2. FacebookでのPR事例

このように、出展社などにPRをしていただく際には、登録サイトのURLを貼るように促してもらいました。

Phase 2 来場前

行ってみたい!行ってみよう!といった気持ちになってもらうためには身近な方々から誘ってもらうのが効果的と考え、私自らも上記のようにFacebookで宣伝をしましたが、大学や専門学校の先生方の力もお借りして、学生に向けて宣伝をしていただきました。特に今回は、若い人たちが興味を持つマイクや音楽制作に関する機器の展示があるのですから、音響を学ぶ学生にとって、足を運ぶだけの魅力は十分にあるはず!

また、何か入場特典があれば惹かれるのでは?と考え、スタンプラリーを実施し、ペットボトルケースや折り畳み傘入れにもなる優れものがプレゼントされることになりました。


写真2. スタンプラリーの景品

さらに、一目で見て、OTOTENって楽しそう!と若い人たちに思ってもらえるようなPRがしたいと思い、過去のOTOTENの写真をたくさん見せてもらいましたが、残念ながら“映える”ものが見つからなかったので、これは今後の課題としたいと思います。

Phase 3 来場

いよいよ、OTOTENに向かう当日のことを考えます。有楽町駅を降りて、ワクワクした気持ちで東京国際フォーラムに向かいます。ですが、東京国際フォーラムにもいろんな建物があって、どこに向かって行ったらいいのか分かりません。ここは、「OTOTENはこちらですよ!」という看板を持った人に誘導して欲しいところ。今回は、このスタッフを増強してもらい、建物の外で大きな声で呼び込みをしてもらいました。


写真3. 熱心に会場に誘導するスタッフ

そして、エスカレーターを降りていきます。さらにワクワクが増してきます。ここで目に飛び込んでくるのは、入場ゲートであり、キービジュアルです。これまでのキービジュアルも美しいものでしたが、若い人たちにとって身近に感じるデザインを検討して欲しいとお願いしました。今回、漫画家・博さんが描かれたイラストには大変多くの反響がありましたが、一部には批判的な意見もあったようです。しかし、若い人たちからすると、目に飛び込んでくるインパクトが非常にあって、「OTOTENにキターー!!」という感激を与えてくれるものだったと思います。

また、会場内にどんな企業が出展しているのかなどを知る掲示も、昨年まではクラシックコンサートに来たかのような上品なディスプレイになっていたのですが、もう少し目立って見やすいものにしてほしいとお願いしました。大きさも従来よりも格段に大きくなったので、「見よう!」という気持ちが沸いたかと思います。これに加えて、今回は歩きながら場内の出展社情報を知ることができるように、VRマップも準備されました。これはスマホ上でストリートビューのように東京国際フォーラムの通路が360度画像で表示され、それを移動させながら各部屋の情報が見られるという優れもの。これは本当に気分が盛り上がります!

Phase 4 来場中

昨年参加した際に一番思ったことが、どの部屋も扉が閉まっていて、中で何をしているのか分からないのと、この扉を開けていいのか分からないというのがありました。親切に開けてくださる出展社の方もいらっしゃいましたが、若い人たちからすると大人に話しかけるのも怖くて、「開けてください」とはなかなか言えませんでした。

そこで、開けっ放しにしてはどうですか?と提案してみたいのですが、それは音が漏れたり、外の騒音が入ってきたりして、落ち着いて試聴したいと思う皆さんの考えとは合わないから、ちょっと難しいね・・・ということだったので、OTOTENツアーと称して、10人くらい引き連れて堂々と扉を突破することも考えてみました。その気合はいいけど、ザワザワして迷惑にならないようにしないとね!とのことなので、この辺のアイディアについては来年に向けて計画を練り直します。

中でやっている内容が外に貼ってあれば、それを見て興味を持って入ってみようという気になるんじゃないかとも思います。また、装飾も少なかったので、お祭り感が薄く、静かで寂しい感じがしましたが、これには会場側による制限という事情もあったようです。一方で、部屋ごとに1つとされていたロールバナーの設置制限が今年は大きく緩和され、少しにぎやかさも出てきました。そういった目で会場内を見て回ると、タイムスケジュールなどは、もっと目立って、分かりやすい場所に置いてあればいいのに、と思いました。


写真6. ロールバナーやタイムスケジュールの掲示

タイムスケジュールについては、先ほど書きましたVRマップと連携して、いろんなイベントをまわり易くするとか、出展社にご協力いただき、ゲームを仕組んでみるとか、いろいろ楽しい仕掛けが出来そうです。

あと、部屋の中では、機器の説明と同時に音楽を聴かせてもらえるのですが、割と一方的だし、若い人たちの耳に馴染みのある曲がかかっていることが少ないので、リクエストに応えてくれたらいいのになぁと思っていたら、末永さんによれば、メーカーの方々にとっては総合的に一番いい方法で説明がされているので、柔軟にリクエストに応えるのは難しいかもしれないとのこと。ただし、今回はG701で音源の持ち込みOKなリクエスト大会というイベントを開催するので、これがどれくらい盛り上がるかで、協会から出展社の皆さんにリクエストに応えることの大切さを説明していくとおっしゃっていました。このイベント、大変盛り上がっていて、めっちゃ楽しそうでしたから、出展社の皆様には是非リクエストに応えることもご検討いただければと思います。


写真7. G701で行われた音源の持ち込みOKなリクエスト大会

G410の名古屋芸術大学の部屋では、学生が制作した作品が披露されていましたが、こんな風に、自分が作曲したり演奏した作品を披露したりすることができたら、すごく楽しいイベントになって盛り上がること間違いなし!


写真8. 名古屋芸術大学のプレゼンテーションの様子

Phase 5 来場後

OTOTENって楽しかったな!一日中、楽しい体験ができたことを思い出しながら帰宅されたら、是非また行きたいなあと思ってもらいたいものです。

ディズニーランドがなぜまた行きたくなるかを思うと、キャストさんの笑顔だったりすると思うのです。ぜひ関係者の皆様には、笑顔で接客していただきたいのと、なるはやで、協会の事務局にはレポートの発信をお願いしたいと思います。特に来年のOTOTENに向けて、小出しでもいいので、どんどん情報発信をお願いしたいと思います。

また、来場された皆さんには、楽しかった思い出をSNSにアップしてもらえるとありがたいです。今回、OTOTENで楽しかったシーンを集めたOTOTENフォトコンテストを実施してもらうことになりました。今後、SNSから見えてくるフィードバックやOTOTENを象徴させる写真を使って、さらに新たな来場者を増やしたり、もっと楽しいOTOTENの実現に向けていけたらいいな!と楽しみにしています。

当日の行動

以上を踏まえ、両日とも会場内外のいいところや改善点を見つけることを念頭に歩き回りました。まず開場前に入場ゲートにたくさんの人が並んでおられるのを見て、感動がありました。さあ始まる!そして、学生に積極的に声掛けし、大人との壁を少なくして積極的に部屋に入っていく様子を見届けました。「学校で使っている機材のメーカーのブースに行く」や「セミナーたくさん予約しました」という声が聞けたり、「試聴するならフルに聴きたかった」といった貴重な声も聞けました。

2日目の6月25日(日)14:30~15:30には、G405の学生向けセミナールームで、「学生の制作する音楽録音作品コンテストについて」と題し、第2回のコンテストで優秀企画賞を受賞された高柳欽也さんを迎えてのトークショーが開催され、そのMCのアシスタントを担当しました。今や『マカロニえんぴつ』のレコーディングエンジニアを務める高柳さんに、どんな気持ちでこのコンテストにチャレンジしたかを語っていただきました。このセミナーに参加された学生さんたちには是非コンテストにチャレンジしてもらい、自分の将来を高柳さんに重ねてくれたらうれしいなあと思いました。私も少しだけ学生時代の話や今の仕事の話を挟ませていただきました。トークショーは大成功に終わりました。

OTOTEN2023を振り返って

正直、若者代表で意見を聞かせてくれと言われたときは、「えええ!私でいいのか?」と不安になりましたが、OTOTEN本番が近づいていくごとに、私の提案がどんどん実現されていくことに、素直に楽しさを覚えていきました。来場者数も昨年より大幅に増え、出展社の皆様にも「若い人たちが多くて楽しい」と言っていただきましたし、小川会長から「双葉ちゃんのおかげで若い人たちがオーディオにたくさん触れてくれた!ありがとう!」とうれしいお言葉を頂きました。今後も協会活動に関わっていいそうなので、コンテストの過去の受賞者たちと連携して、コンテストの応募者を増やす活動をしたり、若者みんなでOTOTENや音の日を盛り上げたりしていけたらいいなと思っています。一緒にオーディオを盛り上げていただける若者大募集です!

長くなりましたが、ご一読いただき、ありがとうございました。

執筆者プロフィール

岩本双葉(いわもと ふたば)
1997年生まれ。神奈川県出身。
洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコース録音専攻 卒業。
4年生の時に、日本オーディオ協会が主催する第6回「学生の制作する音楽録音作品コンテスト」において、優秀録音技術賞を受賞。現在、株式会社トラストネットワーク長野事業部にて音声業務を担当している。