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2023summer
OTOTEN2023開催報告
日本オーディオ協会 OTOTEN事務局 八木真人
さる6/24、25に東京国際フォーラムのガラス棟にて「OTOTEN2023」を開催いたしました。今年は、昨年以上の盛り上がりを見せ、多くのオーディオファンにご来場いただきました。無事OTOTENが開催できましたことに対し、主催者を代表して出展社、関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。以下、OTOTEN2023について報告させていただきます。
1. 新しいOTOTENの始まり
OTOTEN2023は出展社数66社・団体、一般来場者数は2日間計4,337名と前年比130%という高い伸びとなりました。昨年は3年ぶりにOTOTENをリアルイベントとして開催いたしましたが、三密を避けるなどの行動制限が設けられている中での開催でした。しかし今年は新型コロナの感染拡大状況が落ち着き、行動制限もなくなりましたので、OTOTENの開催を待ちに待ったお客様が、特に初日朝の入場待ちは、列が会場を1周するほどの行列になりました。皆様がOTOTENをとても楽しみにしておられたことを改めて実感できた一コマでした。
ところで、オーディオの展示会というとほとんどの方が「普段聴けない高級オーディオが試聴体験できるイベント」とイメージされると思います。それはとても真っ当なイメージだと思いますし、音の良いオーディオを体験することは良い音でコンテンツを楽しむために大変重要です。加えて、今の試聴スタイルには様々なバリエーションがあります。言うまでもなく、多くの人々がイヤフォン・ヘッドフォンで音楽を楽しまれています。イマーシブオーディオの様なサラウンド提案があります。コンテンツも多様化しております。更には音楽の試聴だけでなく、自ら演奏したりコンテンツを製作したりして、ポッドキャストやYouTubeのような配信を行うという新しいオーディオとの接し方も特に若者に人気です。
このように多様化したオーディオ市場において、OTOTENはオーソドックスな試聴スタイルの展示会から「多角的なオーディオ提案を行う総合展示会」に変化していく必要があると考えています。新しいOTOTENとは、緩やかな変化も含め、多様な価値や用途、楽しみ方を存分に体験してもらい、一日中どのブースを覗いてもらってもワクワクし、オーディオファンに未来を夢みてもらえるイベントとしていきたいと考えています。OTOTEN2023は、そのような新しいOTOTENの始まりとして、様々な取り組みをしてまいりましたので、以下にご紹介したいと思います。
2. 多様な用途提案
OTOTEN2023は、来場者が多様な価値や用途、楽しみ方を存分に体験し、なおかつ良い音に出会える場となるように、出展社の幅を広げました。ひとつはマイクなど制作系音響機材を扱う企業、また技術提案を行う企業にも参加していただきました。カーオーディオも4年ぶりに復活いたしました。一部ではありますが、出展社のブースの様子を写真と共に紹介いたします。
制作系音響機材の出展
制作系音響機材は音の入口ともいえるとても重要な機器です。また昨今では自らライブ配信を行う若い人が増えてきております。音楽制作を嗜む人が、マイク、制作系音響機材に興味を持つと同時に、音の出口となるアンプやスピーカーにも関心を持ってもらい、自分の作った音がどのように聴かれているのかを知ってもらうことで、オーディオの裾野が広がって欲しいということから、これまであまりOTOTENでの参加が見られなかった制作系音響機材を扱う企業にもお声掛けし、ご出展いただきました。人気は抜群で、どのブースも若い人を中心に、非常の多くの来場者が訪れていました。
技術提案企業の出展
B1Fの入場口近くには、新技術提案エリアをレイアウトしました。OTOTENにはオーディオ業界関係者が多く来場されます。オーディオ技術やソリューションの提案をしていただくことで、新しいビジネスネットワークが作れ、新しい技術・製品が誕生する可能性が期待できます。さらには企業向けビジネスを行っている出展社にとっては、企業名や技術提案を知ってもらうブランディングの場になります。一般ユーザーにとっても、めったに目に触れる機会のない展示であったことから、絶えず人の往来がありました。
カーオーディオの出展
カーオーディオエリアは常に試聴に訪れた方が列を成しており、その人気の高さを改めて知ることになりました。「なかなかカ-オーディオを試聴できる機会がなかったのでとても有意義だ」という声が多数寄せられており、車内エンターテイメントとしてのカーオーディオの存在感を再認識いたしました。
デスクトップ、イヤフォン・ヘッドフォンからピュアオーディオまで
コアなピュアオーディオファンが自分の求める音質を追究するため、出展社が提案する機器やパーツを吟味することも、知識の深化にとっては大切なことですが、イマーシブオーディオを体験することで新しい発見をしたり、イヤフォン・ヘッドフォンのファンがデスクトップオーディオを聴いて、スピーカー再生の魅力を知ったりというような、多種多様な体感を共有するためのハブ的役割を、OTOTEN2023は成すことができたと考えております。
ソニー
パナソニック
JVCケンウッド
ヤマハミュージックジャパン
ハーマンインターナショナル
完実電気
ナガオカ
光城精工、サエクコマース、
前園サウンドラボ、由紀精密
ティアック
オンキヨー・パイオニア
KEF
スペック、タクトシュトック
クリプトン
プレシードジャパン
dts Japan
WOWOW
3. OTOTENにお祭り感を!
OTOTEN2023は会場演出についても、出展社の方々に多大なるご協力をいただき、従来からの雰囲気を変える試みを行いました。
まず、B1Fの入場口からエレベーターに至る場所は、浅草の仲見世通りのようにしたく装飾しました。ここには、先に述べましたように、今までのOTOTENにはなかった特徴のある出展社の皆様に並んでいただき、「なんだなんだ?へー面白い!こんなのあるんだ!」とイベント会場に到着してすぐにワクワク感を感じてもらって、ここで存分に気分を盛り上げたうえで、4階以上の展示フロアに足を運んでもらうという空間にレイアウトしました。
ガラス棟各階は例年、部屋の中は華やかでも、一度廊下に出るとどこか寂しい無機質な雰囲気がありました。そこで今年は出展規定を改定し、出展社各社が廊下にロールバナーなどを掲出していただける領域を大幅に拡大し、お祭り感を演出していただきました。出展社各社の協力もありOTOTEN2023は例年よりにぎやかな雰囲気となりました。
4. 若い世代の参加
協会主催セミナー・イベント
協会では、若者にオーディオ文化を広めることを目的に、若い世代の来場に力を入れております。OTOTEN2023でも、スタジオ業界やオーディオ業界への就業を志す学生の方を対象にしたセミナーを開催し、延べ251名の方が受講されました。これは音楽作品が作られていく過程を理解してもらうと同時に、様々なオーディオ機器の展示も見てまわって、機器についても正しく理解してもらおうという意図があります。日本音楽スタジオ協会ならびに著名スタジオのご協力をいただくと共に、今年はオーディオメーカーのエンジニア方々からも技術の解説、サウンド創りや音響技術のこだわりについて語っていただきました。学生にとってはプロの話が直接聞ける貴重な機会であり、プロにとっては若い世代の発掘や、企業・ブランドを認知してもらう絶好の機会です。この試みは来年以降も継続する予定です。
J-POP、最新洋楽ヒット曲などを高級オーディオ機器で聴いてみよう、また参加者からもリクエストや音源の持ち込んでもらって、自分が普段聴いているコンテンツで高級オーディオを楽しんでもらおうという参加型の企画で、延べ200人を超える方が参加されました。参加者平均年齢も46歳と、全体の来場者平均より6歳近く若い方が参加されました。若い世代の方がオーディオに興味がないわけではなく、参加者が聴きたい楽曲に柔軟に応じることが、オーディオへの関心が高まる一つの指標となったのではないかと思います。
最新ビルボードからアニソンまで!3時間ぶっ通しリクエスト大会!
名古屋芸術大学の出展
今年は名古屋芸術大学に、ラディウス、メモリーテックとタイムシェアリングでドルビーアトモス再生を体験できるブース出展をしていただきました。名古屋芸術大学は学生・卒業生のための配信レーベル「NUA Records」を立ち上げられていますが、リアルな場で自らが制作した3D Audio作品のプレゼン、デモンストレーションを通じて、学生からは「多くの人に自分の作品に聴いてもらえて、様々な反応が伺えて大変貴重な時間だった」、「この経験を経てオーディオや音楽に関する仕事に関わりたい考えが強くなった」と、彼らにとっても意義のある活動となったようです。
OTOTEN2023の運営でも、音響芸術専門学校の学生61名にインターンシップとして運営に参加してもらいました。慣れない業務で大変だったでしょうが、来場者の誘導がスムーズに行われる様に役割を果たしたり、笑顔で接客をしたりしてくれました。インターンシップの学生の皆さんにはイベント運営の体験と同時に、ブース見学やG405で開催された学生向けセミナーの参加と、2日間OTOTENにフルに関わっていただきました。なかなか機会のない高級オーディオの音に積極的に触れてもらったり、自分が進む音楽業界の先輩方の話を熱心に聞いたりと、目的意識をもって参加してもらいました。彼らが出展社ブースを見学することで、同世代の若い一般来場者が入室しやすかったという声も届いており、若い世代の方々が参加しやすい雰囲気作りを今後も継続していきたいと思います。
5. 来場者登録と分析について
来場者事前登録を今年も実施いたしました。昨年頂戴したご意見を基に徹底的に改善を行いましたので、「どうしたらよいのか?」といった電話の問い合わせはほとんど無くなりました。また個人会員の方への優先入場方方法として、会員証の掲示でご入場いただける方式を取り入れ、約30名の会員の方が来場されました。さらには、ご家族、ご友人の方と一緒に簡単に来場できるように同行者登録も実施し、464組、991名の方が、お連れ様と共にOTOTENに来場されました。
昨年と今年のOTOTEN来場者のプロフィールと比較して、類似点や相違点などの新たな気づきを以下に述べてまいります。
来場者数 4,337名 (対前年+942名、128%増)
男性 3,790名 (対前年+864名)
女性 481名 (同+90名)
平均年齢 51.8歳 (対前年▲0.3歳、64歳以下81%、 うち39歳以下21%)
39歳以下来場者数 919名 (対前年131%、+219名)
今年のOTOTEN来場者の中心が40~64歳の年齢層である傾向は変わらず、39歳以下の来場者は昨年と同じ全体の21%となりました。今年は新型コロナ感染状況が落ち着き、年配の方の外出意欲が増したことから、若い世代だけでなく、全世代の方が昨年以上に来場されました。男性と女性の来場構成比についても昨年同様、若い世代ほど女性来場者が多いのがOTOTENの特徴です。
今回来場された方のうち、2回以上過去OTOTENに来場したことがあるリピーターが増加しました。そのうち1,500人近くの方が昨年も来場、さらには、その10%以上は39歳以下の世代でした。昨年課題として取り上げた「リピーター作り」の施策として、昨年来場された方へのOTOTENの開催案内などを送付した効果が表れました。
「OTOTENを何で知ったか?」という情報ソースにも変化が見られました。39歳以下の若い世代では「知人・友人の紹介」という口コミが大きなウェイトを占めることが昨年の調査で判明していたため、今年は音響系専門学校や大学にOTOTENの案内状を送付しました。その結果、「学校からの案内」が大きく伸びました。
総来場者数は前年から増えたものの、初日、2日目では差が大きく出ました。初日は前年+667名、133%の伸びを示した一方で、2日目は対前年+275名、120%増でした。来場者数の均一化を図るべく、イベントの内容を分けたり、2日間来ていただくための施策検討が必須です。
この他にもデータ分析を多角的に行い、来場者のプロフィールの詳細化、行動分析を行って、来年の施策につなげてまいります。
6. 2024年に向けて
OTOTEN2024に向けてどうしていくべきか?について述べたいと思います。
今年度も「若い方の来場が多かった」という声を多く頂いておりますが、データで示したように、若い世代の来場者比率に大きな変化はありませんでした。若い世代が会場に溢れ、にぎやかなOTOTENとなるようにするために、OTOTEN2024の課題として、「広報」「出展社の幅」「参加型」の3つのキーワードを挙げて、考えを述べたいと思います。
まず「広報」ですが、「OTOTENって何?」という告知活動がまだまだ不足していると考えています。OTOTENとは「自分の好きな音が見つけられる音の体験イベント」ということを一目で見て分かりやすく、また時期についても早くから伝えていくことが重要だと考えています。現代においてはホームページ含め、各種SNSでの発信が不可欠であり、OTOTENコンテンツの具体的な中身を早期に示し、オーディオファンにワクワクしてもらうことが重要と考え、実行してまいります。
次に「出展社の幅」です。冒頭に記しました通り、音の楽しみ方は多様化しております。この多様なニーズに応えられるように、OTOTEN2023では「出展社の幅」を広げていくように誘致活動をしてきました。この方向性は一定の成果をもたらしたと考えておりますが、価値観に共鳴していただいたものの、様子見された企業様がまだまだいらっしゃいました。「出展社の幅」を広げることは、従来カテゴリーにおいても、新規カテゴリーにおいても、各カテゴリーのファンがあまり体験したことのない異なるカテゴリーを体験できる貴重なチャンスであり、出展社にとっても新たなファンの獲得につながると考えます。OTOTEN2023でスタートさせた制作系の企業誘致については、充実したものとなるよう、引き続き誘致活動を継続いたします。
最後に「参加型」です。オーディオイベントでは出展社が用意したプログラムを体験するのが一般的です。今年実施した「最新ビルボードからアニソンまで!3時間ぶっ通しリクエスト大会!」のように、来場者に聴きたい楽曲を募り、会場で聴いていただくというニーズがあるということが、今回分かりました。今後は、OTOTENに関するSNS投稿を開催前から募ることで、参加意欲を高めてもらうことを仕掛けたいと思います。
上記のような施策を行っていくことで、OTOTENがより魅力的な「オーディオ総合展示会」となるように取り組んでまいります。出展社の皆様、協会会員の皆様と共に、新しいOTOTENをさらに前進していくため、今後ともご理解とご協力をよろしくお願いいたします。