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2023winter
連載:思い出のオーディオ Vol.7
一般社団法人日本オーディオ協会 会長 小川理子
皆様、2023年を迎え、今年も新たな気持ちで、どうぞよろしくお願いいたします。コロナ禍は、また変異株が現れてはおりますが、早期の収束を願いたいと思います。昨年は寅年でおおいにトライしました!今年は卯年、協会も皆様とともにトライを続けておおいに飛躍したいと思います。
先日、大学の同窓会で懐かしい校舎を訪れたとき、ふと階段教室を使って音楽イベントをした文化祭の時のことを思い出しました。私はその頃、ジャズやロックやフュージョンやポップスや、いろんなジャンルを楽しむ同好会でバンド活動をしていましたが、大学の文化祭や80年代流行りのパーティイベントではステージ側で演奏する側にいました。スタッフが舞台袖で卓を操作する様子を見たり、PAやモニターの音質調整をしたりする様子を見るにつけ、何だかかっこいいなあ、私も一度あちら側でやってみたいなあ、などと思っていました。
そんな楽しい大学生活を経て、会社に入って新入社員の頃は、音響研究所の試聴室で音そのものを聞きこむことが面白くなりました。そんな時、33素子のイコライザーが置いてあることに気づき、あっこれこれ、これで音をいじってみよう、と音遊びをしだして、ふむふむ、この周波数帯域をいじるとこんな音になるのね、とか、どれくらいいじれば自分の感覚がどんなふうに変わるんだろう、とか、結構面白がって遊ぶようになりました。とうとう、その遊びが高じて、家のオーディオ機器の一つに仲間入りしてしまいました。
たぶん、音をいじるという感覚が、シンセサイザーで簡単にいろんな音を出せるようになった時代を経験して、より身近なものになったのだと思います。感性や感覚を軸とした場合には、機械と人のインターフェースにまだまだ問題があるなあと気づいたのも、そういう遊びが大いに関係していると思います。
その後、DVDビデオが登場して、96kHz/24bitで音楽収録して、サンプルディスクを作ってみよう、という時代が到来したときに、研究所内のスタジオで本格的にミキシングコンソールを使うことになったのですが、何か空を飛ぶパイロットってこんな感じなのかなあ、などと思いながら、とても気持ち良くて、ワクワク感がすごかったです。今では細やかにイコライザーを使うこともなくなり、私にとっては思い出のオーディオということになりました。
あっ、私は生粋の大阪生まれ大阪育ちで、「いじる」という言葉を独特の親近感をもってよく使います。大阪弁ではなく標準語と信じて、このコラムで普通に使ってしまいました。「土いじり」「機械いじり」、最近では「スマホいじり」と、広く使われていますが、私の「音いじり」は、いじる対象が物理的に見えない音だけに、結構感性を研ぎ澄まして、心で受け止める力を育んだのではないかと思っています。