日本オーディオ協会 創立70周年記念号2022autumn

『立体音響、飛躍の10年』
私が思うエポックな立体音響作品10作

選 酒田恵吾(デノン)

感動間違いなし。これぞイマーシブオーディオの名作

Title1 『ゼロ・グラビティ』(Warner) BD ドルビーアトモス音声

Title2 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(20th Fox/Disney) UHDブルーレイ ドルビーアトモス音声

Title3 『エベレスト』(Universal) UHDブルーレイ ドルビーアトモス音声

Title4 『アリー/スター誕生』(Warner) UHDブルーレイ ドルビーアトモス音声

Title5 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(Bandai Visual) UHDブルーレイ ドルビーアトモス音声

『ゼロ・グラビティ』(Title1)は2013年に初めて映画館でドルビーアトモス音響を体験した作品。冒頭13分だけでも3次元立体音響(イマーシブオーディオ)の醍醐味を体験できます。

『スター・ウォーズ』のエピソード1(Title2)。この作品を通じて、進化するサラウンドオーディオを体験してきました。新入社員だった2003年頃、DVDビデオ版でデノンAVアンプ+7.1chサラウンドスピーカシステムでの威力を初体験。2006年に規格がテイクオフしたブルーレイディスク(BD)版としての本作(2011年リリース)でDTS-HDMA7.1chによるロスレスサラウンドに感激。そして、2016年にローンチしたUHDブルーレイでの本作(2020年リリース)で、ドルビーアトモス音声によるイマーシブオーディオで大いに圧倒されました。

世界最高峰の厳しさを立体音響で味わえる作品(Title3)。全方位から吹き荒れる猛吹雪の中にいるような臨場感が凄い。

『アリー/スター誕生』(Title4)は、特にドルビーアトモスによるイマーシブオーディオで聴くレディー・ガガが熱唱する「シャロウ」のシーンに感動。

貴重な日本製アニメーションのドルビーアトモス音声収録作(Title5)は、モビルスーツの動作音やビームライフル音はガンダムらしく、かつリアリスティックに表現しています。

Title6 『ジュラシック・パーク』(Universal) UHDブルーレイ DTS:X音声

Title7 『SPACE STATION』(IMAX) UHDブルーレイ DTS:X/IMAX Enhanced音声

Title8 『HIMMELRAND』(2L) BDオーディオ+SACD Auro-3D 9.1ch音声ほか

Title9 『007/スペクター』(Fox/Warner) ブルーレイ DTS−HDMA7.1ch音声

Title10 『Red(Taylor’s Version)/テイラー・スウィフト』(Republic Records) Apple Music ドルビーアトモス音声

迫力と立体感のある恐竜の足音、そしてホームシアターに響き渡る咆哮に驚く! 約30年前に作られた作品(Title6)がイマーシブオーディオ(DTS:X音声)でこんなにリアルなサウンドになるのかと思わず唖然となりました。

宇宙で撮影されたIMAXオリジナルフィルムのUHDブルーレイ版(Title7)。音声はDTS:XエンコードのIMAX Enhanced仕様で、特にスペースシャトル打ち上げシーンでIMAXらしいパワフルサウンドが味わえます。

BDオーディオ+ハイブリッドSACDのワンパッケージ(Title8)。全体的に透明感があり神々しいコーラスが全方位に響き渡る、Auro-3D音声に注目。立体的表現を大事にする2Lレーベルらしい作品。

AVアンプに搭載されたDolby SurroundモードやNeural:Xモードなどのアップミックス機能の可能性を実感した作品(Title9)。本作の7.1ch音声を7.1.4スピーカーシステムでアップミックス再生すると、チャプター2のヘリコプター内の格闘シーンで、頭上で聴こえるプロペラの旋回音が、傾く機体に合わせて前後左右にスムーズに移動する。

スマホのアプリで手軽に操作・再生できることが強く訴求されている空間オーディオの音源ですが、たとえば本作(Title10)を、Apple TV 4Kを使ってApple Musicのドルビーアトモス音源を、AVアンプとリアルアトモススピーカシステムで聴いた時の音の良さ、そして、音楽に包み込まれる没入感は凄い。これはいままでにない音楽体験であり、圧倒的な面白さを感じました。

執筆者プロフィール

酒田恵吾(さかた けいご)
株式会社ディーアンドエムホールディングス グローバルプロダクトディベロップメント ソフトウェアエンジニアリング DSPソフトウェアエンジニア
1978年、石川県生まれ。龍谷大学卒。北陸先端科学技術大学院大学修了。2003年、株式会社ディーアンドエムホールディングスに入社後、デノン製品の開発に従事。DVDプレーヤー、ブルーレイプレーヤー等のソフトウェア開発を担当する。その後、AVR-4311よりAVアンプのDSPに関連した業務を受け持つ。