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JASジャーナル目次
- 日本オーディオ協会 創立70周年記念号トップ
- 創立70周年を迎えて(小川理子)
- 創立70周年記念号について(末永信一)
- ハイレゾオーディオ発展の流れ(三浦孝仁)
- メーカー開発者対談 エソテリック 加藤徹也 × マランツ 尾形好宣
- ポータブル&ワイヤレスで楽しむハイレゾ(関英木)
- 普及・多様化が進んだハイレゾ音源の世界(山之内正)
- 私が思うエポックなハイレゾ10作品(三浦孝仁)
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- 私が思うエポックなハイレゾ10作品(関英木)
- 私が思うエポックなハイレゾ10作品(山之内正)
- アナログオーディオの10年を総括する(小原由夫)
- メーカー開発者対談 テクニクス 井谷哲也 × オーディオテクニカ 小泉洋介
- メーカー開発者対談 ラックスマン 長妻雅一 × アキュフェーズ 猪熊隆也
- 「ダイレクトカッティング」キング関口台スタジオ 高橋邦明インタビュー
- 「Lacquer Master Sound」ミキサーズラボ 内沼映二インタビュー
- 私が思うエポックなアナログレコード10作(小原由夫)
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- 私が思うエポックなアナログレコード10作(小泉洋介)
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- 加速するイマーシブオーディオ(麻倉怜士)
- メーカー開発者対談 デノン 酒田恵吾 × ヤマハ 熊谷邦洋
- BS8K放送の22.2マルチチャンネル音響(島㟢砂生)
- イマーシブオーディオ制作現場最前線 Xylomania Studio 古賀健一インタビュー
- 私が思うエポックな立体音響作品10作(麻倉怜士)
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- 創立70周年記念鼎談(中島さち子/小林久/小川理子)
- 創立70周年を祝して(佐伯多門)
- 創立70周年に想う(校條亮治)
- 編集後記
- バックナンバー
日本オーディオ協会 創立70周年記念号2022autumn
『ハイレゾ、発展の10年』
私が思うエポックなハイレゾ10作品
選 山之内正(オーディオ評論家)
徹底したこだわりが感じられる音質、仕様、装丁の作品を厳選してチョイス
CDラックと同じようにミュージックサーバーのフォルダーを整理するつもりだったが、現実はそうはいかず、たんにアルファベット順に並んでいるだけだ。今回、私的なエポックとみなせる音源を選ぶために普段使いのサーバーの中身をあらためて見直したら、時代の節目でよく聴いていた楽曲が50タイトルほど候補に上がった。それを再度吟味して絞り込んだのが別掲の10作品だ。
Title1 『Exotic Dances from the Opera/大植英次指揮ミネソタ管弦楽団』(Reference Recordings) WAV 176.4kHz/24bit ※DVD-ROM<HRx>
Title2 『ヘンデル:メサイア(ダブリン初演版)/ジョン・バット指揮ダニーデン・コンソート』(Linn Records) FLAC 88.2kHz/24bit
Title3 『Kuniko Plays Reich/加藤訓子』(Linn Records) FLAC 192kHz/24bit
Title4 『モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》/テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ』(Sony Classical) FLAC 192kHz/24bit
Title5 『バルトーク:管弦楽のための協奏曲/スザンナ・マルッキ指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団』(BIS) FLAC 96kHz/24bit
ハイレゾ黎明期に大植英次指揮ミネソタ管の音源(Title1)が登場してからすでに15年ほどの時が流れた。それから今日まで、いかに多くの重要な録音が登場したことか。近年のデジタル録音はもちろんのこと、アナログマスターのハイレゾ化も予想をはるかに超えるペースで進み、鮮やかに蘇ったリマスタ音源がいまも続々と登場している。
グーセンス(Title7)、ゲッツ/ジルベルト(Title8)、ドムネラス(Title9)、クライバー(Title10)、はいずれもアナログマスターからのハイレゾ化で本来の鮮度が蘇った代表格の音源だ。その臨場感豊かなサウンドをハイレゾで体験して狂喜乱舞したのは私だけではないはず。原盤に忠実なリマスタリングに取り組む機運が高まり、眠っていたアナログマスターが日の目を見る機会が増えたことは、ハイレゾの浸透がもたらした重要な功績の一つに数えるべきだろう。
Title6 『マーラー:交響曲全集/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団』(Berliner Philharmoniker Recordings) WAV 96kHz/24bit
Title7 『ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》/サー・ユージン・グーセンス指揮ロンドン交響楽団』(Everest) FLAC 192kHz/24bit
Title8 『スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト』(Verve) FLAC 192kHz/24bit
Title9 『ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ/アルネ・ドムネラス』(Proprius/2xHD) WAV 192kHz/24bit
Title10 『ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》/カルロス・クライバー指揮シュターツカペレ・ドレスデン』(Deutsche Grammophon) FLAC 192kHz/24bit
演奏家が目指す革新的表現の意味を聴き手に伝えるうえで、進化した録音技術が貢献する実例も増えてきた。それをリアルタイムで体験したことも筆者にとってはエポックメイキングな出来事に思える。初演版の澄んだ響きにこだわるダニーデンコンソートのメサイアはハイレゾで聴くことで真価が伝わり、クルレンツィス(Title2)の革新的解釈の説得力もハイレゾはCDの比ではない。加藤訓子(Title3)は「私が目指す音はCDには収まらない」と明言し、アーティストとしての響きへのこだわりを音で実証してみせた。
世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルは、ベストな演奏を最良の音で聴き手に届けるという思いを団員と録音チームが共有している。オーケストラ主導で企画したシリーズをパッケージとハイレゾの両方で提供し続ける姿勢はその強い思いの現れだ。演奏家たちの支持がハイレゾオーディオの普及をさらに加速させることを期待したい。