日本オーディオ協会 創立70周年記念号2022autumn

『ハイレゾ、発展の10年』
私が思うエポックなハイレゾ10作品

選 関英木(ソニー)

ジャンルを超えて愛聴する、独特の魅力を備えた10曲

Track1 「Without A Song/Eden Atwood」(Groove Note) SACD

Track2 「Love Song/松田聖子」(CBS Sony) FLAC 96kHz/24bit

Track3 「Cheek to Cheek/Tony Bennett & Lady Gaga」(Interscope Records) FLAC 96kHz/24bit

Track4 「The Way You Look Tonight/情家みえ」(RME Premium Recordings) FLAC 192kHz/24bit

Track5 『パリャーソ/朴葵姫』(NIPPON COLUMBIA) FLAC 96kHz/24bit

イーデン・アドウッドのバラード(Track1)は、少しハスキーなヴォーカルに、各楽器が絡み合い、スタジオでのライブ録音による独特の空気感が楽しめる一曲です。

アルバム『Pineapple』に収録された本曲(Track2)で聴ける、松田聖子の全盛期と言えるこの頃の声は、初々しさに艶も加わり独特の魅力を放ちます。夜、この曲を聴くと、何とも言えない切なさが伝わってきます。

トニー・ベネットとレディー・ガガは、異色の組合せでありながら、二人のヴォーカルが好対照な曲(Track3)です。特にレディー・ガガはここまで歌えるのか、と改めて彼女が持つ歌唱力の質の高さに魅了されます。

ヴォーカルにピアノだけのシンプルな構成の曲(Track4)。存在感のある声と、息遣いのひとつひとつも聴かせるという、まさにハイレゾここにあり、の一曲といえるでしょう。

クラシック・ギタリスト朴葵姫によるブラジル音楽作品集(Track5)。独特な滑らかさを持つ彼女の奏法が、アコースティックギター一本による表現力を最大に引き出します。

Track6 「ヤング・ブラッズ/佐野元春」(Epic Sony) FLAC 96kHz/24bit

Track7 「Swear/CASIOPEA」(Alfa) FLAC 96kHz/24bit

Track8 「I’m Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter/Paul McCartney」(Hear Music) FLAC 96kHz/24bit

Track9 「Africa/TOTO」(Columbia) FLAC 192kHz/24bit

Title10 「The girl from Ipanema/Oscar Peterson Trio」(Verve) DSF 2.8MHz

佐野元春とTHE HEARTLANDによる理屈抜きにかっこいい一曲(Track6)。ストレートに響いてきます。少し元気が欲しいとき、この曲をガンガンかけるのと良いのです。

『MINT JAMS』に収録された本曲(Track7)は、ライブ演奏ながら、スタジオ録音のち密さを併せ持つというコンセプトが異色の音源。曲の終盤のみに観客の歓声を残し、ライブ演奏の緊張感と完成度の高さが感じられる素晴らしい構成になっています。44.1kHz/16ビット音源からのリマスター。

私の音づくりの課題曲としても使うのが、この曲(Track8)。ダイアナ・クラールのピアノと、歳を重ねていい具合に枯れたポールの声との掛け合いが楽しいです。

まさに一度聴いたら忘れられないTOTOの名曲(Track9)。この曲がリリースされた1982年はまさに音楽のデジタル化元年というべき年でもありました。

この名曲(Track10)が収められた『WE GET REQUESTS』のオリジナル録音は1964年。当時のアナログマスターにはやや劣化こそ感じられますが、リマスタリングでよみがえった音源を聴くと、素晴らしい録音が垣間みられます。

執筆者プロフィール

関英木(せき ひでき)
ソニー株式会社 ポータブルスピーカー音響設計担当
日本オーディオ協会ハイレゾWG主査
1967年、東京都生まれ。1990年、ソニー株式会社入社。ヘッドホンの筐体機構設計に従事。1999年、ダイナミック型ドライバーユニットを用いた量産カナル型インイヤーヘッドホンを考案。インイヤーヘッドホンの主流である、装着性に優れたカナル型の普及に貢献。現在はポータブルスピーカーの音響設計とテーラーメイドインイヤーヘッドホン〔Just ear〕の音響コンサルタントに従事。