「クモの糸でヴァイオリンは弾けるのか」
クモの糸を集めるのに苦労したことやクモの糸から究極の危機管理法を発見したこと、クモの糸でヴァイオリン用の弦を作成された過程等を寄稿していただきました。
JASジャーナル
2016年1月号(Vol.56 No.1)
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大﨑 茂芳(おおさき しげよし)様
1946年 |
兵庫県に生まれる |
1969年 |
大阪大学理学部卒業 |
1971年 |
大阪大学大学院理学研究科修士課程修了 |
1976年 |
大阪大学大学院理学研究科博士課程修了 |
1995年 |
島根大学教授(兼)島根大学大学院教育研究科 教授 |
1999年~ 2012年 |
奈良県立医科大学医学部 教授 |
2004年~ 2012年 |
(兼)奈良県立医科大学大学院医学研究科(博士課程)教授 |
2008年~ 2012年 |
奈良県立医科大学大学院医学研究科(修士過程)教授 |
2012年~ 2015年 |
奈良県立医科大学特任教授 |
2012年 |
奈良県立医科大学名誉教授 |
学位
1976年3月 |
大阪大学理学部卒業 |
1990年3月 |
農学博士(京都大学) |
受賞歴
2013年4月 |
文部科学大臣表彰 科学技術賞 |
業績概要
蜘蛛の糸の物理化学的性質の研究
(1) クモの糸から究極の危機管理法の発見
生体の分泌する代表的なタンパク質としてクモの糸の物理化学的研究に取り組んできた。クモの糸(命綱)の強度がクモの体重のちょうど二倍であり、命綱は電子顕微鏡で二本のフィラメントであることがわかった。この“2”という数値に基づく危機管理の考え方は、紐などの工業的素材のみならず、橋や家の構造物や社会における様々な事柄の危機管理に適用できることがわかった。
(2) 紫外線で強化されるクモの糸
クモの糸は絹糸よりも高い紫外線耐性を持ち、紫外線によって力学的に強化されることを見出した。
(3) クモの糸の強さを実証
クモの糸の強さを証明するために、クモの腹から集めた糸束でヒトがぶら下がることに世界で初めて成功した。本結果は、クモの糸の防弾チョッキや縫合糸などへの用途を広げる道を開いた。
(4) クモの糸でヴァイオリンの弦を作成
実用化レベルのクモの糸の機能性を明らかにするために、クモの糸でヴァイオリン用の弦を作成した。周波数解析をした結果、クモの糸の弦はガット弦や金属弦と比べて倍音の強度に大きな差異が見られ、クモの糸は弦楽器の弦として独特な音色を示す素材であることが分かった。
生体組織におけるコラーゲン線維の研究
マイクロ波を用いて分子や繊維の配向性を計測する新しい方法を見出した。マイクロ波方式を用いて、皮膚、骨、肺、血管などの生体組織におけるコラーゲン線維の配向分布を求めた結果、生体における配向性と運動機能との関係を初めて明らかにした。