第7回 2021年
空彩〜SORAIRO〜360 Reality Audio 48kHz 24bit
- 名古屋芸術大学 芸術学部 芸術学科
- 伊東 桜佳さん
作品について
作品のコンセプトは?思いついたきっかけは?
曲名にもあるように空をイメージした楽曲なので、妹が思い描いた空を、立体音響を使ってさらに深く表現できる作品を目指しました。雨が降る空や、朝日や夕日が煌めく空など、空の様々な表情を表現するため、楽器の定位にこだわり制作しました。
大学でのクラシック音楽のバイノーラルの配信に関わる中、ポピュラー音楽の立体音響作品の制作に興味を持ったこと、またコロナ禍で家にいる時間が増え、姉妹でお互いの演奏を聴く機会が増えたことで、妹の作曲した楽曲を聴き、立体音響作品にしてみたい曲だと感じたことが制作のきっかけです。
制作時苦労した点・表現できた点・工夫した点は?
各楽器の細部まで完成度の高い演奏を録音する為、楽器ごとに音を分けて録音を行いました。
元々電子オルガンのソロで演奏していた作品だったので、楽器ごとに演奏するためには、すでに制作してあるレジストレーションを分解し、音を作り直す作業が必要でした。苦労しましたが、楽器の特徴を考え奏法を変えながら、細かく表現を付けた演奏を録音することができました。また、立体音響にしたことで各音が何を表しているのかを細かく表現することができました。
その反面、電子オルガンソロで演奏したときに比べ、一体感が欠けるように感じました。パーカッションのセクションがない部分では、テンポを合わせて弾くのが難しく、揃えるためにクリックをつけると音楽が機械的になってしまうなど上手くいかない点がありました。
また、リバーブ成分の一切ない音で録音したことにより、“360 Reality Audio向け制作ツール”で定位を決めながらリバーブの調整をすることができ、自由に空間を作り出すことができました。しかし、その分直接音感が強く感じられる部分がありました。制作していく中でリバーブの定位の仕方や量によって音の表情が変化していくのを感じたため、さらに研究する必要があると感じました。
作品の聴き所・アピールポイントは?
毎日変化していく空は、その日の自分の気分次第で様々な彩を見せてくれます。この楽曲は、雨が降る空や、朝日や夕日が煌めく空など、様々な表情を見せてくれる空を表現するために、ピアノや電子音を使い音色やリズムにもこだわって制作されています。
どのような空を表現しているのかを想像しながら楽器の定位なども楽しんで聴いていただければ嬉しいです。
また、電子オルガンならではの、楽器編成や音楽表現も様々なところに散りばめられています。
そのようなところにも注目して聴いていただければと思います。
※スマートフォンアプリ「Artist Connection」にて、360 Reality Audioでの試聴が可能です。
利用者登録不要、無料でご利用いただけます。
ご利用の際には、お手持ちのスマートフォンで下記リンクまたはQRコードでにアクセスし、イヤフォン、ヘッドフォン等をご使用ください。
https://share.artistconnection.net/content/561tNH
– 上記リンクからうまく聴けない際のご試聴方法-
1. 以下のQRコードを保存する(スクリーンショットでも可)
2. Artist Connectionのアプリをインストールする
・iPhone
(https://apps.apple.com/jp/app/artist-connection/id1448283987)
・Android
(https://share.artistconnection.net/content/eydrAz)
3. アプリが立ち上がったらサインインはせず、QRコードをスキャンさせる
一度こちらの手順でアクセスして頂ければ、今後はそのままアプリから視聴が可能です。
– 技術協力:SONY –
コンテスト参加ついて
受賞の感想をお願いします!
今回初めて録音のコンテストに応募しました。妹の作曲した、「空彩〜SORAIRO〜」という作品は、私自身とても気に入っていた作品だったので、優秀音楽作品賞という素敵な賞をいただくことができ、本当に嬉しかったです。
参加のきっかけは?
作品制作のきっかけは、妹の作曲した楽曲を聴いていて、具体的な立体音響での楽器の定位が想像でき、挑戦してみようと思ったことです。
その後、先生からこの作品をコンテストに応募してみないかと声をかけていただき、改めて録音、制作をし応募させていただきました。
制作時のエピソードはありますか?
妹にこの楽曲を立体音響作品として制作してみたいと相談した際には、どのようなものになるのか想像がつかなかったようです。大学で私がどのようなことを勉強しているのか、なかなか伝える機会がなかったので、とても良い機会になりました。
パートごとに録音をしていく中では、演奏方法や、レジストをさらに工夫することができ、普段電子オルガンのソロで演奏しているのとはまた違った楽器の使い方を見つけるきっかけになりました。
参加してみて良かったことは?
今回立体音響の音楽作品制作をする中で、ステレオでも十分に音楽は楽しめますが、立体になることで音楽の表現はさらに広がることが感じられました。今回使用した“360 Reality Audio向け制作ツール”に関して、さらに研究していくことで、より自分の表現したい音楽を制作していけるのではないかと思いました。また電子オルガンを使用しての音楽作品の制作は、さらに様々な表現をしていくことが可能なのだと改めて感じることができました。
また、これまで姉妹ではアンサンブル等で、一緒に演奏することはありましたが、共同で作品制作をする機会はありませんでした。今回制作していく中で、これまで気づいていなかったお互いの考え方や音楽を知ることができました。また2人で作品を作ってみたいと思います。
音楽制作をしてみて、音楽の聴き方は変わりましたか?
立体音響の作品については、楽器とリバーブの定位や、表現の方法ついて、より細部まで分析して聴くようになりました。また、ステレオの作品の、音楽表現の仕方も意識して聴くようになりました。
現役学生へコンテスト参加へのメッセージ・アドバイスをお願いします!
今回初めて録音のコンテストに応募しました。自分がコンテストに出せるような作品を作ることができるのか
不安はありましたが、録音し、編集していく時間は、自分にとって学ぶことの多い充実した時間で、貴重な経験となりました。
1つの作品を作り上げることは、簡単なことではありませんが、今回作品として完成させたことは、自分の自信にも繋がり、さらに新たなことに興味を持つきっかけになりました。みなさんも、ぜひこのコンテストを目標に作品制作をしてみてください!
審査員評
- 企画書に写真や図版が掲載され記述が丁寧。収録コンセプトが良く伝わった。
- アレンジや音色の選択、楽器の配置が的確で、サラウンドとしての演出効果が出ている。
- 多重録音や2chステレオの出力を22.2chに仕上げる残響処理、ディレイ処理など、制作の苦労がみえる。
- フィールドレコーディングへのこだわりが感じられた。
- とても広がって包まれ感があり、360 Reality Audioの良さをうまく使っている。
- ストリングスに包まれる感じや上方のパーカッションなど、多彩な音像が好印象。
- ミキシング時のリバーブ付加をより大胆にしても良いと感じる。
- マイキングや録音空間の音響特性を利用した遠近感表現ができない不利は、演奏をスタジオや教室に置いたスピーカから再生してマイク集音するなどの工夫で補うことができたかもしれない。そうした何らかの工夫で、より奥行きのあるイマーシブ音声を作ることが出来ると、より高い評価が集まる作品と感じた。
JASジャーナル
使用機材やマイクセッティング、音像定位についてなど、作品についてさらに詳しく寄稿していただきました。合わせてご覧ください。
JASジャーナル
2022年冬号(Vol.62 No.1)
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