第7回 2021年
I’ve Been In Love 2ch 48kHz 24bit
VIDEO
音響芸術専門学校
元山 由香さん
曽根 万鈴さん
奈良 雪乃さん
濱崎 昂希さん
森田 千紘さん
山下 華凜さん
横山 彩さん
後列左から: 横山さん、曽根さん、森田さん、濱崎さん
前列左から: 山下さん、元山さん、奈良さん
作品について
作品のコンセプトは?思いついたきっかけは?
10cc「I’m Not In Love」という、素晴らしい音楽作品の特殊なコーラスレコーディングに感銘を受け、今の時代に私たちが持てる技術で再現してみようと思いました。
46年前、16chのアナログマルチトラックレコーダーや2chアナログテープレコーダーを用いたレコーディングが主流の中、「I’m Not In Love」は2chアナログテープをループにすることでロングトーンを作り上げ、それをマルチトラックレコーダーの各トラックにコピーしてバウンスし直すことで、分厚いコーラスラインを生み出しています。私たちの手でもこのような作品を作ってみたいという気持ちが生まれ、今回の作品を企画いたしました。
「I’m Not In Love」は男性目線の曲であるため、対するアンサーソングは女性目線にしてはどうかなど、みんなで意見を出し合いました。
制作時苦労した点・表現できた点・工夫した点は?
参加者全員が機材などに触るのが初めてだったため、機材の扱い方を覚えることに苦労しました。
曲の最後のコーラスの押し寄せるような感じを、いかにノイズが乗らないように責められるかなど、フェーダーを使った演奏での強弱の付け方を何度もやり直しました。
フェーダー演奏の元となるロングトーンは、自分たちの「アー」の音を息が続く限りレコーディングしたものを、コピー&ペーストによって5分程度の長さにしました。
MIX作業についても、音のバランスやコンプレッサー、イコライザーの掛け方など、もっと細かいところまでこだわれるとよかったなと思います。
今回は2MIXとなりましたが、機会があればイマーシブ音源化にも挑戦したいです。
作品の聴き所・アピールポイントは?
10ccのメンバーたちの音と向き合う姿勢に学びながら、「I’m Not In Love」のアンサーソングを自分たちで作詞作曲し、シンプルな原曲に対して、楽器の編成・フェーダー演奏でのコーラス部分も付け加えて華やかにしました。また、コーラスボイス数を原曲の624を上回る1040にして、ProToolsを用いた現代的な手法でコーラスレコーディングしました。
恩師や多くの方に手伝っていただきつつですが、初めて企画/作詞/作曲から、レコーディング/MIXまでを行った作品です。
VIDEO
音響芸術専門学校YouTubeアカウントにて楽曲が公開されています。
収録・編集風景と合わせてご覧ください。
コンテスト参加ついて
受賞の感想をお願いします!
参加者が個々で頑張りつつ、みんなで作り上げた作品なので、このような賞をいただくことができて光栄ですしとても嬉しいです。
参加のきっかけは?
学校の授業とは違うことがしたいと思ったことがきっかけです。
自分たちで作品を制作し、それを評価していただける場があることが面白いなと思いました。
制作時のエピソードはありますか?
制作前は、完成の形がどのようになるのか全く想像ができませんでした。
作っていくうちに、どのような形にしたいのかが次第に見えてきて、どうすればそこまで持っていけるかなど
意見の交換や思考錯誤をしながら制作をしていきました。
参加してみて良かったことは?
参加者全員、初のレコーディングということで不安もありましたが、機材やProToolsの使い方、レコーディングの準備から作業の流れまで、この企画を通して学ぶことができました。
1つの作品を作り上げるという作業の中、それぞれの音に対するイメージを発信してもらうことで、自分のイメージのみに固執するのではなく、そういう考え方もあるのかと新しく気付かされる場面が多くありました。相手の音のイメージも知ることで、それも自身の音に対する考えの蓄えになったように思います。作品を最後まで作り上げることができたという達成感も得られました。
音楽制作をしてみて、音楽の聴き方は変わりましたか?
音楽作品や音に対して、ただ聞くだけではなく、どのようにして作られているのだろうと考えるようになりました。どうすればこの音が作れるのだろう、何の音なのだろう、と今までよりさらに注意して聞くことができ、音に対する興味がより深くなりました。
現役学生へコンテスト参加へのメッセージ・アドバイスをお願いします!
何も分からないところからのスタートでしたが、一緒に作品を作り上げる仲間と知識を交換し、より多くのことを学ぶことできました。1人で不安なときは誰かを誘ってみるといいかもしれません。
審査員評
企画がとてもユニーク。コンセプトがはっきりしていて良い。
目指す音楽やそれに対する手段などの意図が明確で良い。
偉大な原曲を目指したことにより、楽曲のユニークさや完成度が上がったのではないか。
コーラスの処理がとても面白く聞けた。
ピアノが効果的で音色も比較的良い。
ミックスバラスが良好。抑揚を大事にしているのが良くわかる。
ボーカルの音量がバックのストリングスによりマッチするように、細かくレベル調整できるとなお良い。
リバーブとディレイをさらに工夫して、全体の包まれ感が出ると良い。
トータルコンプの設定を工夫することでより一体感が出るのでは。
マスタリングでキックとベースの低音域を増して迫力や重量感が出せるとさらに良い。
JASジャーナル
使用機材やマイクセッティング、音像定位についてなど、作品についてさらに詳しく寄稿していただきました。合わせてご覧ください。
JASジャーナル
2022年冬号(Vol.62 No.1)
→受賞結果一覧へ