音の匠

第2回 1997年音の匠

篠原 儀治様

顕彰内容

「江戸風鈴の継承」

第2回の音の匠選考では「風と音」、「歴史の素材」をキーワードに選定されました。
江戸風鈴の技法に独自の技法を加えながら伝承された篠原 儀治様を顕彰いたしました。

プロフィール

篠原 儀治(しのはら よしはる)様

篠原風鈴本舗は千葉県に隣接した江戸川区の南篠崎にあり、創業は今を去ること約80年前の大正4年。当代の儀治氏は大正13年(1924年)生まれで、儀治様はその二代目にあたる。昭和30年代までは吹きガラスによる風鈴製造工房は東京都内を含め8~9軒ほどあったとのことであるが、伝統を今に伝える江戸風鈴製造元は今では篠原風鈴本舗1軒のみとのこと。通りに面した作業場では冬でも溶けたガラスが赤々と光を放つ。風鈴はまったくの手作りで、ガラス管の先に種ガラスをつけてまず小さい球を作る。この球にさらに種を付けて、ガラス管を斜め上に持ち上げる「宙吹き法」によって作り上げたのち、ヤットコで管から切りおとし、後加工を経て本体ができ、その後絵付けなどを行い完成される。暮らしのひとコマを彩る風鈴にも形状の工夫や肉厚を変えるなどの秘密があり、“舌”にあたるガラス棒が風に揺られて本体に当たる部分をギザギザにすることによって独特の澄んだ音色を生み出すとのことである。篠崎様が作る風鈴は、夏の夕方、行水のあとの一種気怠い心地よさに通じる落ちついた音を発している。せわしい世相を反映してか、最近ではもっとピッチの高い音のするものが要求されることもあるという。