音の匠

第5回 2000年音の匠

清水 虔様

顕彰内容

「備長炭ビブラフォンと炭琴の開発」

紀州備長炭を炭琴・備長炭ビブラフォンなどの楽器として開発し、その普及と備長炭の告知活動に努められた清水虔様を第5回「音の匠」として顕彰いたしました。

プロフィール

清水 虔(しみず めぐむ)様

1929年生まれ、姫路在住。1950年の英語教諭を振り出しに教頭・校長を務められるなど長年教育界に身を捧げられる傍ら、1989年に備長炭のすばらしさを多くの方々に認識いただくために「びんてふ友の會」を結成された。清水様はそれらの普及にあきたらず、独特の音色に着目し、楽器として活かす道を考えられた。およそ9年前の木琴ならぬ「炭琴」の試作を手始めに、より優れた楽器としての完成度を目指してヤマハに製作協力を依頼し、4年余の歳月をかけてビブラフォンの開発の取り組まれ、ようやく1999年の夏に完成されたとのこと。工業製品とは異なり、天然の素材から目的の音色・音階を得る材料を決める作業など、多くの課題を克服しての楽器の完成には多くの困難があったことと推察される。備長炭は江戸時代に紀州(和歌山)の商人、備中屋長左衛門が「備長炭」と名付け、江戸まで船で送り売り込んだことに由来するといわれるもので、原材料は樫(ウバメガシ)の木とのこと。高弾性率などの物性を持つカーボンはオーディオ用デバイスとしても縁が深く、スキー板やゴルフシャフトその他の素材としても知られる。 この備長炭は一般には極めて優れた燃料としても、また吸収・吸着材としての物性をもっており、 鰻や鳥などの焼き物の燃料をはじめ、消臭材としても話題にのぼる。白炭とも呼ばれる備長炭はまた、金属にも通じる独特の澄んだ音色をもっており、 先人の工夫と智恵が活かされた得難い素材といえる。