2003年はテレビ放送50年にあたり、またデジタルラジオ放送や地上デジタル放送の開始の年でもありますので、 「音の日」の記念行事のテーマを「放送の音」にいたしました。
そして第8回目の「音の匠」として放送番組制作における音響デザインや効果音のお仕事でご活躍の3名を選定いたしました。
玉井 和雄(たまい かずお)様
株式会社 文化放送 編成局(元 同局制作部 次長)
1932年生まれ。
1954年株式会社文化放送に音響効果要員として入社。
入社間もない見習中にドラマの重要な効果音の主役を担当し、以来この世界の魅力に取り付かれる。
日常のドラマ番組制作のほか、芸術祭や民放祭の参加作品などの特別番組制作や、CMの効果音制作で数々の賞を受賞した業界の重鎮。
1963年に2時間ドラマ「堀江謙一・マーメイド号」の効果音を担当、大半が太平洋上という設定で音造りに苦労する。
1965年放送の2時間ドラマ「戦艦大和」は心理的な効果音を含め、ダイナミックかつ象徴的な表現で壮大な鎮魂譜の作品。
1970年の大阪万博では住友童話館のすべての効果音をプロデュース。
1976年に「ナマロクの本」、78年に「生録プロフェッショナル」を著作刊行。
文化放送を定年退職後も業務契約を結び活躍中。尚、現在放送批評懇談会の会員でもある。
今井 裕雄(いまい ゆたか)様
日本放送協会 放送技術局 制作技術センター ドラマ番組技術 音響制作 副部長
1951年生まれ。
1961年(10歳)NHK児童劇団入団。NHKのラジオ番組を中心に出演。
1965年前後、NHK長寿番組「ブーフーウー」の縫いぐるみに入り、ダンサーとして4年間活動。
1970年、NHK音響効果部入社。同時期に劇団を設立し、舞台にも傾倒。劇団民芸などで舞台音響を学び、現在は日本舞台音響家協会理事。
NHKでは『シルクロード』やドラマなどジャンルを問わず音響デザインの現場を約30年間勤め、現在は行政職として後任の指導に当たっている。
映画においては、小栗公平監督の「泥の河」から黒澤明監督の最終作「まあだだよ」に至るまでの多数映画作品のフォーリーに参加。
海外では、サンフランシスコのスカイウォーカーランチでハイビジョン番組「曼荼羅」の音響をアカデミー賞受賞のゲイリー・ライド・ストロームと組んで制作。
その他の活動として、ラフォーレ原宿で「三感迷路」を発表し、施設や街、イベント会場等の立体音響作品を手がけている。
また、作家CWニコルとの出会いがきっかけで自然に興味を持ち、屋久島などで樹木の鼓動を聴き、独自の「音の顕微鏡」という手法を使い、波動を音として体感する研究も行っている。
優れた作品の制作により、朝日賞、ギャラクシー賞、文化庁芸術祭・大賞、イタリア賞等多数の賞を受賞。
久保 光男(くぼ みつお)様
日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 音響デザイン 副部長
1952年生まれ。
NHKに入局し、音響効果に配属。
新人研修の時にラジオの学校放送「みんなの図書館」の「怪盗ルパン」でルパンが警官に追われる足音を演じたのが最初の仕事。
自分の身体が発した音が全国のラジオから流れていく不思議さにカルチャーショックを受けつつも、人形劇・アニメ・社会科番組 など教育系の番組を担当し、つづいてドラマの世界に入り込み現在に至る。
1981年、NHK初のステレオテレビドラマ「星の牧場」制作に参加。 現在ではダイアローグをセンターにまとめ、背景音に広がりをつけるのが主流だが、この時は人物の位置に合せて台詞を 左右に大きく振るなど映像に合せたサウンド空間づくりに苦労をした。
最も印象に残る作品は音が主役のニューウエーブドラマ「音・静の海に眠れ」。
戦争の後遺症に悩む老人と孫娘 静の物語だが、老人の心を癒す音を自分の体験に重ね合わせてハーモニカの音として完成させた。
この作品はプラハの国際テレビ祭の金賞を、また放送文化基金賞の音響効果賞を受賞した。
主たる担当作品は金曜時代劇「風神の門」「腕におぼえあり」大河ドラマ「春の波涛」「翔ぶが如く」シリーズ「にっぽん水紀行」「歴史ドキュメント」等々。