コラム ホームシアター

Vol. 64 ~より自然な音の再生について~

昔の話になりますが、オーディオ評論家をされていた故高島誠氏のご自宅で虫の声の音を聴かせて頂いたことがありました。その折、高島さんが「これを大学の生物担当の教授に聴かせたらね、おかしいって言うんだ」「虫はね、自分の声が出来るだけ遠くまで届く様、風が吹いて居る時に鳴くんだよ。この音は全然風の音がしていないよ。そんな中で虫が鳴いているのはおかしいよ」と言われたそうです。そこで高島氏は超低域まで再生出来る様、6 Wayマルチシステムを構築し風のそよぎ音迄再生したそうです。その高島さんがお亡くなりになられてもうすぐ21年になります。

 

もう御一方、この方もオーディオ評論家として異彩を放った故長岡鉄男氏です。独特の自作スピーカーで今でも多くのファンの方々に支持されています。長岡氏の晩年に「方舟」と言うホームシアタールームを作られました。そこで色々な映画を見せて頂きましたが、「ウィロー」と言う映画を見せて貰った時の事です。「さっきの映画は絵で脅して怖がらせたが、この映画は音で恐怖感を味わう演出なんだよ」と言われました。とてつもない大きさのキャノン砲が横たわっていて風の描写や地面を這って来る地響きに物凄い恐怖感を感じたものです。高島さんは音の世界だけで自然界を再現し、長岡さんは絵に見合う音で映画の生々しさを教えてくれました。長岡さんが亡くなって5月で14年になります。今では大画面によるホームシアターも4K、8Kと益々高画質によるリアリティを得る事が出来るようになって来ました。さて、この高画質に見合うリアリティのある音はどうあるべきでしょうか。

 

改めて先人が伝えたかったより自然な音の再生に対する情熱を引き継いで行かなければならないと思う今日この頃です。

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